ふたり。-Triangle Love の果てに
あの日、俺と母さんは夕飯の買い物を終えて木枯らしの舞う中、家路を急いでいた。
母さんは片手に買い物袋を、もう片方の手で俺の冷たい手をしっかりとつないでくれていた。
「今夜は勇作の好きなハンバーグにしようね」なんてニコニコしながら。
弾む足取りで母さんに並んで歩いた。
家の前まで来ると、俺は鍵を渡された。
「先に中に入ってて。母さんは郵便が来てないか見てくるから」
「うん」
鼻歌交じりに俺は玄関に向かった。
だけど、すぐにグシャリ…そんな音が背後からした。
振り返ると、買い物袋が庭の石畳の上に落ちていた。
りんごがひとつ、そこからこぼれている。
あーあ、今の音じゃ卵も割れちゃったなぁ…
幼かった俺はそんなことを思っていた。
だけど、すぐに母さんの様子がおかしいことに気付いた。
真っ青な顔で、苦しげに眉を寄せている。
「母さん!?」
思わず手に持っていた鍵を落とした。
カシャン…
「どうしたの!!」
駆け寄ると、血の気の失せ状態で何度も嘔吐く母さん。
そしてしばらくそれを繰り返すと、弱々しく言ったんだ。
「ちょっと疲れてるのかな」って。
それからすぐだった。
真琴がお腹の中にいるってわかったのは。
その時の母さんの横顔と、今目の前にいる真琴が重なる。
どくん、と胸が大きく跳ね上がった。
まさか…
まさか…