ふたり。-Triangle Love の果てに
つい先ほどまでの復讐心、使命感、そんなものがいつの間にか消えていた。
代わりに後悔の念が津波のようにこの俺を襲う。
俺は…
俺はとりかえしのつかないことをしてしまったのでは?
泰輔兄さんはこのままだと確実に逮捕されるだろう。
しかも圭条会の人間だ、懲役は免れない。
そうなったら、真琴とこれから生まれてくる子は…
おぼつかない足取りでエントランスを出ようとした時、真琴の声が俺を呼び止めた。
「お兄ちゃん!」
声が高い天井に反響して、幾重にも重なる。
「本当は、お兄ちゃんに祝福してもらえるような人を愛せばよかったんだけど…でも私にはやっぱり泰兄しかいないの」
「…そうみたいだね」
「ごめんね、こんな妹で」
真琴…
澄んだ目が充血していた。
泣かなくていいよ。
泣く必要なんてないんだ。
おまえと泰輔兄さんが出会い、愛し合って、その証がこの世に生まれてくる…こうなることは運命だったのかもしれない。
だとしたら、俺にはどうすることもできなかったんだ。
なのに悪あがきをして、おまえたちを引き裂こうとした。
嘘までついて…
その上、俺は今からさらにおまえたちを苦しめようとしている。
「俺の方こそ祝ってやれなくて…」
かぶりを降ると、俺はこう言い残して足早にその場を後にした。
「ごめんな、こんな兄貴で。本当にごめん…」