ふたり。-Triangle Love の果てに


夢を見てた。


目が覚めた後も、俺の中で真琴が幸せそうに微笑む姿がまだ揺らめいていた。


この虚しさは一体何だろう。


泰輔兄さんから真琴を引き離したくて仕方なかったのに。


今夜、その願いが叶うというのに。


どうしてこんな焦燥感にかられるのだろう。


のそのそと起き上がると、シャワーを浴びて身支度を調えた。


出社すると隣の新人が、挨拶もそこそこにこう言った。


「噂になってますよ、片桐先輩が北村さんをフッたこと」


ふぅん、と気のない返事をしながら俺は席に着く。


「独身男性社員、全員を敵に回したって感じですね」


仕事もなかなか覚えないくせに、相変わらずそういう情報だけは仕入れるのが早いなと思いながら、メールをチェックする。


マウスを動かしながら、ざっとその内容に目を通した。


このまま仕事に集中していれば、泰輔兄さんのことも真琴のことも考えずにすむ。


気がつけば、何もかも終わっているに違いない。



俺は必死で彼らのことを頭から追い出そうと、仕事に取り組んだ。


昼休憩がそろそろ終わりを告げる頃だった。


「先輩、この前の原稿なんですが、後でチェックしてもらえませんか」


隣から数枚の原稿用紙が送られてきた。


「ああ、いいよ。そこに置いといて」


パソコン画面に目を向けたまま、俺は答えた。


「今回は小学生の夏休みの過ごし方についてまとめてみたんですよ。はら、もう新学期が始まるでしょ、宿題がちゃんと終わってる子と、そうでない子の生活習慣の違いを聞き取り調査して…」


俺の手が止まる。


「…ごめん、今何て?」


「やだなぁ、先輩、ボーッとして。暑さでやられたんですか。もう夏休みが終わるでしょ、それに関する子ども向けの特集ですよ」


夏休みが終わる…?


「今日何日?」


キョトンとした彼をよそに、卓上カレンダーを手にとる。


「明日だ…」


「は?明日がどうかしたんですか?」


勢いよく立ち上がり鞄をつかんだ俺に、後輩が慌てて言った。


「ちょ、ちょっと先輩!どこ行くんです、原稿のチェック…」


「悪いけど、自分でチェックしてチーフに渡しておいて」


「そんなぁ」


情けない声が後ろから聞こえたが、そんなことにかまってはいられなかった。


エレベーターを待つのもじれったくて、階段をかけ降りる。

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