ふたり。-Triangle Love の果てに
アスファルトから立ち上る熱気に、ふたりして顔を歪める。
「どうしたの」
それには答えず、「明日、入籍するって?」と俺は訊いた。
「ええ」と頬を赤らめながら頷く真琴。
「この前話しそびれたことなんだけど」
「うん、なあに?私も気になってたの」
俺が何をしたのかも知らずに首を傾げる彼女の様子に、この胸がかきむしられるようだった。
「今夜、おまえの結婚の前祝いをしたいんだ。時間とれないかな」
「前祝い?本当に?嬉しい!あ、でも私この後はYesterdayの仕事が入ってるの」
「俺からマスターにお願いするよ。今夜だけ真琴を俺に貸してくれって」
「でも…」
「兄貴として、妹の結婚を祝いたいんだ。きっとマスターだって了解してくれるよ。これまでいろいろあって、おまえには苦しい思いをさせた。だからどうしても今夜時間をとってほしいんだ」
潤む真琴の瞳。
「…うん、じゃあそうさせてもらうわ」
ためらいがちではあったが、了承してくれた。
「マスターには俺から言っておくから。17時には駅のロータリーにいてくれないかな。遅れるかもしれないけど、泰輔兄さんと一緒に行くから」
「泰兄も?」
ぱぁ…っと顔が輝く。
きっと、泰輔兄さんと俺が仲直りをしてくれたのだろうと真琴は思ったに違いない。
3人で楽しいひとときを過ごせると期待に胸を膨らませたに違いない。
「ああ、彼も来るから。だから時間を過ぎて来なくても、そこで待ってて。必ず行くから」
「うん」
にっこり笑う真琴。
「ありがとう、お兄ちゃん。楽しみにしてる。じゃあ、そろそろ仕事に戻るわ、後でね」
「あのさ、真琴」
背を向けた彼女に、声をかけずにはいられなかった。
「ん?」
俺、決めたよ。
おまえのためなら、どんなことでもする。
おまえを守りたい。
今までどうかしてた。
おまえを俺のもとに取り戻したって、その心は泰輔兄さんにしか向かないことはわかっていたのに。
意地になってた。
真琴、おまえが生まれた時に俺は誓ったんだ。
俺が…
お兄ちゃんがおまえを守ってやるって…
「真琴はさ、今幸せ?」
「ええ、とっても」
三日月のように彼女は目を細めた。