ふたり。-Triangle Love の果てに
「俺のせいで…」
「ううん!それは違う!絶対に違うわ!」
真琴は激しくかぶりを振った。
「あのことがなければ、私たちはこうやって生き直すことも、式を挙げることもできなかったわ。だからそんなふうに思わないで」
そうは言ってくれたが、この罪悪感は一生消えないだろう。
それを背負って生きていく、これが俺の償いへの道なんだと思った。
一方、真琴はこの3年間の出来事を思い返している、そんな遠い目だった。
「ママ!」
その声に我に返る俺と真琴。
彼女の足下にしがみつく、小さな女の子。
その目元が真琴にそっくりで…
「この子が?」
「ええ、私と泰兄の…ミヅキっていうの。美しい月とかいて美月」
そう言って真琴はにっこり笑って、その幼子を抱きしめた。
「この人、パパ?」
俺の顔をまじまじと見上げる美月。
「ううん、この人はママのお兄ちゃん。今日はね、おめでとうって言いにきてくれたの」
ふぅん、とおそらく理解していないが、とりあえず納得したふりをするかわいい女の子。
ピンクのドレスにピンクのリボン。
めいっぱいのオシャレをしている。
「おいで」
俺が腕を広げると、美月は「いやっ」と言って教会の方に逃げるように走って行った。
「早速、嫌われちゃったなぁ」
「今は人見知りの時期だから」
申し訳なさそうに真琴は俺を見る。
「…泰輔兄さんは、もう…?」
あえて平静を装って訊ねる。
「もうあっちを出たはずよ。直接ここに来ることになってるの」
「そうか」
時間を確かめるわけでもなく、腕時計を見るふりをした。
真琴と目を合わせているのが、つらくなったからだ。
それきり沈黙が続く。
そんな兄妹の仲を取り持つように、ふんわりと優しい春風が桜の花びらを運んできた。
「…いい天気でよかった」
「そうね」
「なぁ、真琴」
改めて目の前にいる妹を見た。
真っ白なウェディングドレス。
きれいに結わえた黒髪。
抜けるような白い肌が、太陽の光の中で輝いている。
少し痩せたようだが、その美しさは変わってはいない。
むしろ母親という強さが加わったせいで、洗練された美しさを彼女は身にまとっていた。