ふたり。-Triangle Love の果てに
私が今着ているウェディングドレスは、綾乃おばさまが辻本先生との結婚式に着たものらしい。
なんでも、大好きだったおばあさまが作ってくださったのだそう。
そんな大切なものを、と一度は断ったのだけれど、おばさまは「のぞみが着るのはまだまだ先だし、それに真琴ちゃんは私にとっては娘も同然よ。たくさんの女の子の幸せのお手伝いができたほうがドレスだって、作った祖母だって喜ぶわ」と笑った。
おばさまは小柄だったから、そのまま私が着ると丈が短くてくるぶしが丸見え。
それを直してくれたのは、綾乃おばさま。
私の身体にぴったりになった出来上がったばかりのドレスを着て鏡の前に立った時、涙が溢れ出てきた。
心が激しく震えていた。
おばさまの優しさに。
泰兄を恋しく想う、その切なさに…
「あら?裾が汚れてるわ」
おばさまは真っ白なハンカチを取り出すと、私の足下でしゃがみこんだ。
「すみません、さっき庭で探し物を…」
「もう、真琴ちゃんはおてんばね。今日くらいはのぞみをこき使って、自分はじっとしてなくっちゃ」と裾についた泥を払ってゆく。
のぞみと目が合った。
美月を抱っこしたまま、「あった?」と唇が動いた。
微笑んで頷く私。
綾乃おばさまはああ言ったけれど、これだけはどうしても自分で探したかったの。
四つ葉のクローバー。
ハンカチに包んで、胸元の下着と素肌の間にはさんでいる。
彼に渡したい。
ずっと昔、ここを出て行く彼に手渡した時のように。
私たちを様々な困難の中でも結びつけてくれた四つ葉のクローバー。
今度は一緒に願いをかけたい。
胸元に手を当てて、静かに目を閉じた時だった。
「来たよ!来た!」
子どもたちが弾かれたように、一斉に騒ぎ出した。
「みんな静かに!」
天宮先生が人差し指を唇の前に突き立てる。