ふたり。-Triangle Love の果てに
午前8時半。
なんとか6時間は眠れる。
時刻を確認すると、枕に顔を埋めた。
数秒もすれば、もう夢の中。
これで私の一日は終わるの。
夢の中で、私はあのカウンターに立っていた。
キャンドルの光が時折揺らめき、そのたびに物影を思いもかけず大きく揺らす。
チリリリン…
幾度となく聞いたドアベルと、重たそうな鉄製の扉が閉まる音。
お客様がいらしたのだ。
でも夢の中の私には、それが誰なのかわかっている。
コツリ、コツリ…と革靴がむき出しのコンクリを打つ音が響く。
私は顔を上げた。
不思議なことに、顔は見えないその相手に私はドキドキしている。
夢の中の私には、それが誰なのかわかってる。
だからその足音だけで、あなたが来てくれたんだってわかるの。
私の胸の高鳴りに呼応するかのように、足音はさらに近づいてくる。
「いらっしゃいませ」
目の前には、その彼が座るの。
カウンター越しに見つめ合う私たち。
照れくさくて何を話していいのかわからずに、その場を取り繕うように私はウィスキーのボトルを手に取った。
それでも彼の視線は私をとらえて離してはくれない。
「今夜は…」
そう彼が口を開いた瞬間、小さな電子音が蚊の羽音のように耳にまとわりついた。