ふたり。-Triangle Love の果てに
手探りでその音を探す。
うなり声とも、ため息とも言えぬ声が思わず漏れた。
「もう…2時半?」
あっと言う間に夢から引き戻されてしまったのだ。
重いまぶたを半開きにして、私は時計を見た。
もうちょっと眠りたい…
あとほんの少しだけ…
さっきの夢の続きを見せて…
あの人が誰なのか。
どうして私はあんなにもドキドキしていたのか…
また目を閉じそうになって、私は自分を奮い立たせた。
だめだめ、これじゃあ、お兄ちゃんと一緒じゃない。
うん!と思い切って身体を起こした。
厚い生地の遮光カーテンを勢いよくあけて、伸びをした。
当然のことだけれど、外は明るくて眩しい。
私は軽い食事をすませると、身支度を調えた。
髪にクシを通すと引っかかって痛い。
いつも乾かしてから寝ればよかったなって思うのに、いざとなると眠気には勝てずに、濡れたままふとんにもぐりこんでしまう。
今この時にも、私はさっきの夢のことを考えていた。
「彼」は一体誰なんだろう、って。
家を出ると、私は本通りの片隅にある喫茶店へと急いだ。
ここで15時半から19時半までの4時間、バイトが入っている。
「こんにちは」
店の前で鉢植えの手入れをしている、店主のゆり子さんに声をかけた。
「あら、真琴ちゃん、こんにちは。今日もよろしくね」
いつ見ても、このゆり子さんは素敵な女性だと思う。
30代半ばだとは思えないほどのすらりとしたモデル並みの体系は、まだ20代だと言っても誰も疑わないだろう。
涼しげな顔立ちは気品に溢れていて、身のこなしも優雅。
私の理想の女性像。
笑顔で応えた私は、店の中に入った。
コーヒーの芳ばしい匂いが漂う。