ふたり。-Triangle Love の果てに


手探りでその音を探す。


うなり声とも、ため息とも言えぬ声が思わず漏れた。


「もう…2時半?」


あっと言う間に夢から引き戻されてしまったのだ。


重いまぶたを半開きにして、私は時計を見た。


もうちょっと眠りたい…


あとほんの少しだけ…


さっきの夢の続きを見せて…


あの人が誰なのか。


どうして私はあんなにもドキドキしていたのか…


また目を閉じそうになって、私は自分を奮い立たせた。


だめだめ、これじゃあ、お兄ちゃんと一緒じゃない。


うん!と思い切って身体を起こした。


厚い生地の遮光カーテンを勢いよくあけて、伸びをした。


当然のことだけれど、外は明るくて眩しい。



私は軽い食事をすませると、身支度を調えた。


髪にクシを通すと引っかかって痛い。


いつも乾かしてから寝ればよかったなって思うのに、いざとなると眠気には勝てずに、濡れたままふとんにもぐりこんでしまう。


今この時にも、私はさっきの夢のことを考えていた。


「彼」は一体誰なんだろう、って。



家を出ると、私は本通りの片隅にある喫茶店へと急いだ。


ここで15時半から19時半までの4時間、バイトが入っている。


「こんにちは」


店の前で鉢植えの手入れをしている、店主のゆり子さんに声をかけた。


「あら、真琴ちゃん、こんにちは。今日もよろしくね」


いつ見ても、このゆり子さんは素敵な女性だと思う。


30代半ばだとは思えないほどのすらりとしたモデル並みの体系は、まだ20代だと言っても誰も疑わないだろう。


涼しげな顔立ちは気品に溢れていて、身のこなしも優雅。


私の理想の女性像。


笑顔で応えた私は、店の中に入った。


コーヒーの芳ばしい匂いが漂う。
< 5 / 411 >

この作品をシェア

pagetop