ふたり。-Triangle Love の果てに
静かめのジャズがかかった店内には、誰もお客さんはいない。
カウンター席が5つと、ボックス席が3席のこじんまりとした喫茶店だけれど、山小屋をイメージした内装と、花を欠かさない和やかな雰囲気。
冬には今時珍しい薪ストーブが、冷えて縮こまったお客さんを暖めてくれる。
この喫茶店はメニューは少ないけれど、昼はランチ、夜は定食を格安で出してくれるし、ゆり子さんの人柄もあるのだろう、常連さんがたくさんいる。
コートを着たまま、私はカウンターの中に入って冷蔵庫に貼られたメモを手に取った。
牛ロース、白ネギ、焼き豆腐、白菜、しらたき…
メモを見れば、だいたい今夜の定食のメニューがわかる。
きっと今日は「すき焼き定食」。
私の仕事は近くの24時間営業のスーパーに買い出しにいくことから始まる。
「ゆり子さん、買い出しに行ってきます」と、表で黄色くなった葉を摘んでいた彼女にそう告げた。