ふたり。-Triangle Love の果てに
いつもより早い朝ご飯と、無口な私たち兄妹。
「今日、シトラスのバイトの前にお墓参りに行ってくるわね」
私は箸を置いて、お兄ちゃんに言った。
「俺も仕事の都合がつき次第行くつもりだよ」
「あの…それとね、お兄ちゃん…」
「ん?」
「あのね、泰兄が…」
私は彼がYesterdayでお父さんとお母さんにお酒を手向けてくれたことを話した。
「父さんたちのことを言ったのか?泰輔兄さんに?」
思ってもみないお兄ちゃんのきつい口調に、とまどった。
「ううん、ただ今日が命日だってことだけ」
お兄ちゃんは大好物のオムレツにはほとんど手を付けないまま、箸を置いた。
「あまりあのことは人には言うんじゃないよ」
「わかってるわよ」
そんなことくらい、わかってる…
「あれから泰輔兄さんはよく店に来るのか?」
お兄ちゃん、どうしてそんな怖い顔をするの?
泰兄と何かあったの?
「そんなには…時々よ、本当に時々…」
週に2、3日は顔を出してくれるなんて、今この場で言える雰囲気ではなかった。
仕事に出かけるお兄ちゃんを見送ると、私はいつものように片付けをすまし、お風呂に入ってからベッドに潜り込んだ。
目を閉じると、泰兄のことが浮かぶ。
少し冷めた声と、時折見せる憂いに満ちた瞳。
そんな彼に恋をしてしまったことは、もう否定できない。
どうしていいのか、私わからない…
誰も教えてくれなかった。
恋をしたらどうなるのか、どうすればいいのか、なんて。
人を想うとこんなにも苦しくなるなんて。
みんなこんなに誰かのことに胸を焦がして、眠りにつくものなの?
これが恋というものなの?