ふたり。-Triangle Love の果てに
次の日、真琴が困ったような、それでいて照れくさそうな顔で言った。
「泰兄に日曜日はお兄ちゃん無理だって話したらね…」
「うん、何て」
ためらう妹に、俺は先を促す。
「じゃあ、ふたりで行くかって…」
ほうら、思った通りだ。
「いいじゃないか、行っておいでよ」
「でね、泰兄がね『勇作は心配性だから、昼間に会おう』って」
さすが、泰輔兄さん。
俺のことをよくわかってる。
苦笑いの俺に、真琴はまだ行っていいものか悩んでる、というようなことをぶつくさ言ってる。
「私、お兄ちゃん以外の男の人と出かけたことなんてないし、どんな格好で行けばいいのかわかんないし」
意識しすぎだよ、おまえは。
それじゃあまるで、泰輔兄さんに恋してますって告白してるようなものだよ。
「だって、泰兄ってお金持ちでしょ?高級レストランとか…私気後れしちゃう」
「じゃあ、真琴が行き先を決めたら?」
「私が?」
「そう、庶民のおまえがね」
ふうむ、と考える仕草をしてしばらく、「そうね、それもいいわね」とふっきれたような笑顔を俺に向けた。
楽しんでおいで、真琴。
俺はなぜか直接そう言ってやることができなかった。
ただ、心の中で呟いただけだった。
それもたった一度だけ…