ふたり。-Triangle Love の果てに
「あとこれ、サービス。どうぞ」
そう言って差し出してくれたのは、フルーツの盛り合わせだった。
きれいにカットされたリンゴやオレンジ、私の大好きなイチゴまでのっている。
「でも…」
「いいの。残り物で作ったから」
ちらりとのぞく八重歯が艶っぽかった。
「ありがとうございます。じゃあ、いただきます」
ジャズ音楽と、食器の音だけが店内に響く。
私はカップを手にとり、コーヒーを一口すすった。
おいしい…
声にはならなかったけれど、確かにこの口はそう動いた。
次に私はウサギの形をしたリンゴをかじった。
シャリッと音を立て、それは私の口の中へ転がり込んできた。
噛めば噛むほど、皮の食感と果汁が相まって、懐かしい味がした。
施設で食べた、少しなまぬるいリンゴの味。
私はもう一口、りんごをかじった。
「あなた、この先にある専門学校に通ってるの?」
カウンターの向こうから、ゆり子さんが訊いた。
「え?」
「バッグからテキストが見えてたから」
なるほど。
「ええ、そうなんです」