悪女

ゆか


あら、あの時のネコ。
久しぶりね、何の用?


君、噂になってるよ。


なんの噂?


妊娠と流産。



そんなの誰も信じないわよ。


大学中の噂だ。
いい加減真面目になったらどうなんだ。 子供の父親がわからなくても、産もうとしたことはえらいと思う。
でも、君は今までたくさんの男と関係をもって、たくさんの男を傷つけてきただろ?
周囲の人が何を言おうがお構い無しだったじゃないか。
そのつけが回ってこないほうがおかしいよ。


あなた、なんで全部知ってるの?

天使だから、なんでも知ってる。


裕太の事も。


そうなんだ。
お腹、痛かった。


痛かったね、赤ちゃんかわいそうだったね。


君にもいいところはいっぱいあるんだ。 なんでそう、男の事ばかり考えてるんだ。


君は運命の赤い糸の人と出会っていつか幸せに暮らせるんだよ?

男を騙すのは、若いうちだけ、そのうち年をとっておばあちゃんになったら、誰が相手にする?
いつまでもそんな考えを持ち続けていても、幸せにはなれないよ。


私は、こんなにかわいくてセクシーなのに、だって男の子がよってくるんだもん。

それは、君がしかけてるんだよ、しかけなきゃこない。


なにそれ、私がなにもしなくても勝手によってくるの。


またそんな。
男を騙す事が幸せで はありません。

自分の目標を達成する。
暖かい家庭、仕事、健康。

当たり前の事の中に幸せがあるんだ。

世の中には、不幸な人はたくさんいる。

君はね、十分恵まれてるんだ、恵まれない国の人が君を見たら憎しみを感じるだろうよ。


あなた何が言いたいの?


君を更正させにきた。


更正するところなんかない、私はまとも。


絶対ちがう、おかしい。
僕が変えてみせる、僕は天使だ。



ハッハッハ
天使ーー?
どうみても汚い野良猫にしか見えない。

あなたなんかいなくたって私は幸せよ。 サヨナラ、ネコくん。




まったく、わからず屋だな。

流産までさせられたっていうのに。

どうかしてるぜ。
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