妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「そうなのかな。でもお前、それまでは主なしだったろ。それはお前に見合う主がいなかったからじゃないのか? まだ幼い私など、お前からしたら試す価値もなく喰い殺すところだろ? そうなっても良いから、私をわざわざお前に渡したのではないのか?」

 呉羽の言葉に、そはや丸は否定も肯定もせずに、ふんと鼻を鳴らしただけだった。

 所詮妖など、そんなものだ。
 気まぐれに人の子を育ててみたものの、飽きればおもちゃのように捨てる。
 その後その子が他の物の怪の餌食になろうが、知ったことではないのだ。

「でも結果的には、お前はちゃんと俺の主になってるじゃねぇか。そんなことは、どうでも良いんだ。今問題なのは、右丸のこった」

 強引に話を打ち切り、そはや丸は上体を起こした。

「さっきも言ったが、烏天狗は本来かなり高等な物の怪だ。その烏丸が、お前に切羽詰まった気を送ってきたのは、もしかしたら右丸の身に異変が起きたのかも」

「ふぅん。そりゃ大変かもな。だが、私もさっき言ったが、何が起こっていても、私が右丸のところに行くわけにはいかないんだ。とりあえずは、飛ばした式が無事に何かを掴んでくることを祈るだけだな」

 さして大変だという感じもなく、呉羽は開け放した妻戸から、差し込んでくる朝日を見つめた。
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