妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
---右丸の身が心配なんじゃなく、烏丸が必死なのが気になるのか。全く呉羽は妖寄りだねぇ。右丸の奴、気の毒に---

 元々呉羽は、男嫌いだ。
 じっと黙っていれば、そこらの姫君にも劣らないほどの容姿である呉羽は、それなりに言い寄られることも多い。
 だが大抵の者は、呉羽が地下人であることを良いことに、遊び女と同じ扱いをするのだ。

 そういうことが度重なったこともあり、呉羽はすっかり男が嫌いになったのだ。

 だがそれは、ヒトの男に限ったことかもしれない。
 現に、共にあるそはや丸は、本身は刀とはいえ、人型は普通の男の姿だ。

---ま、右丸も初心い奴だから、いきなり呉羽に手出しはせんだろうし、大人しくしてる分にゃ、嫌われることはなかろうが---

 だがそういう対象になるには、長く呉羽と共にあるそはや丸の目から見ても、遙かに長い道のりに思える。
 呉羽の中では、右丸の印象よりも、烏丸の印象のほうが大きいというのが、それを如実に物語っている。

 そんなことを考えているうちに、呉羽はぽんと簀の子を蹴って地に降り立った。

「見てくる」

「俺も行こうか?」

 簀の子に懐手で立つそはや丸を振り返り、呉羽はちょっと考えた。

「ヤバい気か?」

「・・・・・・そんな感じは受けないが。そのまま三条邸に行くことになったら、ややこしいんじゃないか?」

「ん~、まぁ行くとしても、この格好のまま連れて行くようなことはせんだろう。貴族ってのは、いろいろとうるさいからな」

 ひらひらと手を振って、呉羽は蓮台野の入り口のほうへ歩いていった。
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