妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
 その頃、蓮台野の入り口では、一人の女官に数人の雑色(ぞうしき)が群がっていた。
 別に女官を襲っているわけではない。
 反対に、雑色らは必死で女官を引き留めているようだ。

「お、お待ちください! このような場所に、ほたる様をお入れするわけには参りません」

「時刻もすでに逢魔が刻(おうまがとき)です。そのような禍々しい時刻に、このようなところに足を踏み入れるなど!」

 まとわりつく雑色たちの真ん中にいる女官は、口々に言う彼らを振り払うように、キッと顔を上げて、夕闇迫る蓮台野を見た。

 その目が、葬送の地から現れた巫女姿の影を捉え、びく、と強張る。
 女官の変化に、雑色たちも動きを止め、一斉に蓮台野のほうを見た。

「・・・・・・左大臣様縁(ゆかり)の者か?」

 呉羽は少し手前で立ち止まり、女官を見た。
 歳は呉羽より上だろうか。
 だがまだ二十歳にも届かないであろう若さのわりに、それなりの歳の雑色たちを抑え込む気位がある。
 雰囲気からして、この女官が嫌がる雑色を率いてここまでやってきたのだろう。

 いきなり現れた呉羽を、女官は恐ろしげに見た。
 が、すぐに気を取り直し、周りの雑色から一歩前に出る。

「あなた様が、呉羽という外法師ですか」

 丁寧なんだか無礼なんだかわからんな、と思いつつ、呉羽は頷いた。
 もっとも礼儀に関しては、呉羽自身人のことは言えない。
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