妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「困りましたねぇ・・・・・・」

 女官が端から呉羽をそういう力の持ち主と思っていたのなら、屋敷に連れ帰る算段もつけていないのだろう。
 う~む、と考え込み、ふと呉羽は横に座るそはや丸を見た。

「こいつを連れて行きますか?」

 そはや丸なら刀になれる。
 女官が持つものではないが、人が忍び込むより遙かに容易いはずだ。

 だが女官の顔には、疑問符と共に嫌悪にも似た表情が浮かぶ。

「そ、そのような男子(おのこ)こそ、お屋敷になど入れるわけには参りませんよ!」

「大体何で、俺様が右丸のためなんぞに、こんな高飛車な女官の手の内に入らんといかんのだ!」

 女官に負けじと、そはや丸も声を荒げる。

 元々が大貴族に仕える女官だ。
 このような地下人に、罵倒されたことなどないのだろう。
 女官の顔が、あからさまに変わった。

「たっ高飛車ですって・・・・・・! わ、わたくしの、どこが・・・・・・」

 わなわなと震える。
 呉羽は頭を抱えたまま、密かにそはや丸を睨み付けた。

「お前のほうが、簡単に屋敷内に入れるだろう・・・・・・。それだけだ。それに、妖絡みなら、お前だってそれなりに対処できるだろ。別に女房殿に仕えろと言っているわけではない」

「やだね。右丸がどうなろうと、知ったことじゃねぇよ」
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