妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「とにかく、気になることを言ったのはお前だ。ヤバいかも、と思ってるお前なら、それなりに対処もできるだろ? それにだな」

 一旦言葉を切り、呉羽は親指と人差し指で、丸を作ってみせる。

「金儲けだと思え」

「・・・・・・ま、確かに。寒くなったら客足も遠のきがちだからな」

 しぶしぶだが、そはや丸はようやく頷いた。

「それでは女房殿。こいつを連れて行ってください。何、心配は無用です。えっと、こいつはそれなりの術が使えますので、ちょっとした目眩ましで、己の姿を変えられます故」

 妖刀などとは言えない。
 妖であることがバレたら、それこそ厄介だ。

 それに、そはや丸の妖力は、負の力なのだ。
 下手にそはや丸を刺激するようなことを周りが言うのは、避けたい事態だ。

 とりあえず、当たり障り無く、しかもそはや丸の気を害することなく手短に、呉羽は説明した。

「目眩まし・・・・・・」

 呉羽は一応巫女装束なので、外法師らしいといえばそうだが、そはや丸は単を重ねただけの着流しだ。
 そんな者が、それなりの術を使えるとも思えない。
 疑わしそうに、女官はそはや丸を見る。

「とにかく、こいつなら無事に右丸の傍まで行くことができます。妖に関する知識もあります。今はこいつを信じて、連れて行ってください」

 有無を言わさず、呉羽はそはや丸を女官に押しつけた。
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