妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「今から三条邸まで行くのか。ったく、面倒臭ぇなぁ」
ぶつぶつ言いながら、そはや丸が厨から出てくる。
一応先までの着流しは、前に調達した水干に着替えている。
粗末だが、とりあえず出来うる限り怪しげな雰囲気は出さないほうがいい。
格好だけでも普通にしておけば、屋敷内に入った後に、下手に人に誰何されることもないだろう。
「頼んだぞ。お前のことだから、心配はいらないと思うが、万が一私が必要になったら呼んでくれ。そのときは、何とかして飛んでいくから」
ぼそぼそと耳打ちする呉羽に、そはや丸はにやりと口角を上げる。
「いつになく素直だなぁ。お前がそこまで俺を頼るとはね。ふふ、今の言葉、右丸に聞かせてやりたいぜ」
「仕方ないだろ。今頼りになるのは、お前しかいないんだ。お前こそ、素直ではないか。確かにお前のことを信頼して私が遣わしたと知れば、烏丸も安心するだろう」
うんうんと頷く呉羽に、そはや丸は顔を背けて、ぷぷっと吹き出した。
やはり呉羽の中に、右丸のことなどないようだ。
「お前がいつもそうだと可愛いんだがな。まぁいい。暇潰しぐらいにはなろうさ」
ぐりぐりと呉羽の頭を撫で、そはや丸は外に出て行く。
屋敷を出たところでは、女官が必要以上に顔を上げて待っていた。
やはり、足元を見る勇気はないようだ。
日ももうほとんどない。
そのまま歩き出そうとするそはや丸に、呉羽は慌てて燭台を渡した。
が、そはや丸は、それを投げるように女官に渡す。
「あ、えっと。私たちは人より夜目が利きますので。どうぞ、女房殿がお持ちください」
もうちょっと人間らしく振る舞ってくれ! と心の中で叫びながら、呉羽はぽかんとしている女官の燭台に灯を入れた。
「そはや丸! 女房殿を、ちゃんとお守りするんだぞ!」
さっさと歩いていこうとするそはや丸に怒鳴り、呉羽は女官にぺこりと頭を下げ、屋敷内に引っ込んだ。
ぶつぶつ言いながら、そはや丸が厨から出てくる。
一応先までの着流しは、前に調達した水干に着替えている。
粗末だが、とりあえず出来うる限り怪しげな雰囲気は出さないほうがいい。
格好だけでも普通にしておけば、屋敷内に入った後に、下手に人に誰何されることもないだろう。
「頼んだぞ。お前のことだから、心配はいらないと思うが、万が一私が必要になったら呼んでくれ。そのときは、何とかして飛んでいくから」
ぼそぼそと耳打ちする呉羽に、そはや丸はにやりと口角を上げる。
「いつになく素直だなぁ。お前がそこまで俺を頼るとはね。ふふ、今の言葉、右丸に聞かせてやりたいぜ」
「仕方ないだろ。今頼りになるのは、お前しかいないんだ。お前こそ、素直ではないか。確かにお前のことを信頼して私が遣わしたと知れば、烏丸も安心するだろう」
うんうんと頷く呉羽に、そはや丸は顔を背けて、ぷぷっと吹き出した。
やはり呉羽の中に、右丸のことなどないようだ。
「お前がいつもそうだと可愛いんだがな。まぁいい。暇潰しぐらいにはなろうさ」
ぐりぐりと呉羽の頭を撫で、そはや丸は外に出て行く。
屋敷を出たところでは、女官が必要以上に顔を上げて待っていた。
やはり、足元を見る勇気はないようだ。
日ももうほとんどない。
そのまま歩き出そうとするそはや丸に、呉羽は慌てて燭台を渡した。
が、そはや丸は、それを投げるように女官に渡す。
「あ、えっと。私たちは人より夜目が利きますので。どうぞ、女房殿がお持ちください」
もうちょっと人間らしく振る舞ってくれ! と心の中で叫びながら、呉羽はぽかんとしている女官の燭台に灯を入れた。
「そはや丸! 女房殿を、ちゃんとお守りするんだぞ!」
さっさと歩いていこうとするそはや丸に怒鳴り、呉羽は女官にぺこりと頭を下げ、屋敷内に引っ込んだ。