妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
 夕闇の中、葬送の地で、小さな灯がゆらりゆらりと揺れている。
 灯を持つ女官は、必死で目の前の水干の背中を睨みながら、懸命に歩を進めていた。

 何も前を行く人物が憎いわけではない。
 このような時刻に葬送の地で、連れに置いて行かれたくないから必死なのだ。

 前の水干の男とは違い、女官は出歩くことに慣れていない。
 何度も転びそうになるが、転んだりしたら最後、何が視界に飛び込んでくるか、わかったものではない。
 それでなくても先程から、足を踏み出すたびに、不快なものを踏んだ感触が走る。

 転ばないよう、遅れないよう気をつけながら、女官は必死で前を行くそはや丸を追い続けた。

「・・・・・・ったく、そんな必死の形相でずっと睨まれちゃ、こっちだって落ち着かんぜ」

 しばらく行ったところで、ぽつりとそはや丸が口を開いた。
 そして、ゆっくりと振り返る。
 女官は慌てて、袖で顔を隠した。

「人間は面倒だねぇ。こんなときでも体面かい」

 馬鹿にしたように言う。
 女官は一瞬むっとしたが、ここで怒らせて去ってしまわれたら一大事だ。
 それに、怒りはすぐに、恐怖に取って代わられる。

「ま、まるでご自分は、人間でないような物言いですね」

 袖で顔の下半分を隠したまま、女官は言葉を返した。
 そはや丸は否定も肯定もすることなく、少しだけ口角を上げる。

 その表情に、女官は少し心が騒いだ。
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