妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「ほたる様、どなたかとご一緒だったのですか?」

「お姿がお見えになったときから、お一人でしたよ?」

 口々に言いながら、雑色らは気味悪そうに辺りを見渡す。
 雑色らとは違った意味で、女官も辺りを見回した。

 そはや丸がいないのは困る。
 ここに来た意味がないではないか。

 だが、呉羽ははっきりとそはや丸に、右丸のところに行くよう命じていた。
 どういう力関係かは知らないが、何となく、呉羽の命は絶対のような気がする。

 それに。

 女官は牛車に乗り、御簾を降ろした。
 そはや丸が命じられたことを放り出すとも思えないのだ。
 女官の前で、そんな誠実な態度を示していたわけでもないが、何故だか女官はそはや丸を信頼していた。

---呉羽様は、彼(か)の者は目眩ましの術を使えると言っていた。きっと、今は見えないだけなのだ---

 そう納得し、女官は牛車を出すよう、雑色に告げた。
 途端に牛車が動き出す。
 皆、このようなところ、早々に立ち去りたかったのだろう。
 牛飼い童はやたらと牛を急かし、お供の雑色らは駆け足だ。

---そはや丸は、ちゃんとついてきてくれているだろうか---

 あまりの速さに、女官は少し心配しながら、牛車の中で小さくなっていた。
 女官はもちろん、周りの雑色らも、彼らの中の一人の腰に、いつの間にか大きな太刀が差さっているのに気づかなかった。
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