妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
第三章
左大臣家に入ると、女官は真っ直ぐに右丸の元へと向かった。
「右丸、具合はどうです」
粗末な狭い部屋で、藁にまみれて転がっている右丸の横に座り込み、声をかける。
見たところ、顔色も悪いわけではない。
ただ、己を抱くように丸くなって、苦悶の表情を作っている。
「ふぅん? あんまり良くない状態だなぁ」
のんびりとした低い声に、女官は息を呑んで飛び上がった。
勢い良く振り返ると、いつの間にやらそはや丸が女官の後ろに立ち、肩越しに右丸を覗き込んでいる。
「っな、なな・・・・・・そ、そはや丸っ。いつの間に・・・・・・どこにいたのです」
「細かいことは気にすんな。人より容易に屋敷内に入れるって言ったろ」
それより、と、そはや丸は不意にずいっと女官に顔を近づけた。
「気安く呼ぶんじゃねえ。大体お前は何者だ。名も名乗ってないぜ」
不気味に光る漆黒の瞳に見据えられ、女官は顔を隠すことも忘れて固まった。
先程の驚きも手伝って、冷や汗が背中を伝う。
「けっ。態度ばっかでかくて、全く礼儀のなってねぇ女官だな」
冷たい一瞥を残し、そはや丸は右丸の傍に屈み込む。
屈辱で、女官は顔を真っ赤にしながら、渡殿を走り去って行った。
「右丸、具合はどうです」
粗末な狭い部屋で、藁にまみれて転がっている右丸の横に座り込み、声をかける。
見たところ、顔色も悪いわけではない。
ただ、己を抱くように丸くなって、苦悶の表情を作っている。
「ふぅん? あんまり良くない状態だなぁ」
のんびりとした低い声に、女官は息を呑んで飛び上がった。
勢い良く振り返ると、いつの間にやらそはや丸が女官の後ろに立ち、肩越しに右丸を覗き込んでいる。
「っな、なな・・・・・・そ、そはや丸っ。いつの間に・・・・・・どこにいたのです」
「細かいことは気にすんな。人より容易に屋敷内に入れるって言ったろ」
それより、と、そはや丸は不意にずいっと女官に顔を近づけた。
「気安く呼ぶんじゃねえ。大体お前は何者だ。名も名乗ってないぜ」
不気味に光る漆黒の瞳に見据えられ、女官は顔を隠すことも忘れて固まった。
先程の驚きも手伝って、冷や汗が背中を伝う。
「けっ。態度ばっかでかくて、全く礼儀のなってねぇ女官だな」
冷たい一瞥を残し、そはや丸は右丸の傍に屈み込む。
屈辱で、女官は顔を真っ赤にしながら、渡殿を走り去って行った。