妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
 右丸はただ、切なげに北のほうを見つめた。

『右丸ぅ、お姉さんに会いに行こうよぅ。おいら、お姉さんに会いたいよぅ』

 右丸の中で、烏丸が駄々をこねる。
 そんな烏丸が、右丸は羨ましい。

 本当のことを言うと、右丸だって呉羽に会いたいのだ。
 だが右丸がそれを言うのは、さすがに憚られるというか・・・・・・。

 子供が大人に懐くように、単純に呉羽を慕っている烏丸とは違い、右丸の気持ちは、はっきりと恋慕の情である。

---ああ、こんなことなら、頼長様にお願いして、歌でも習っておけば良かった。気の利いた和歌の一つも贈れない男なんて、あの気高い巫女姫は、見向きもしてくれないだろうな---

 相変わらず鬱々と、右丸は竹箒を動かす。

 右丸の中ではえらい地位が上がっているようだが、実際呉羽は‘気高い巫女姫’などではなく、もっぱら庶民相手の外法師なのだが。
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