妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「そはや丸、どうしたんだ? お前が水を飲むなんて珍しい」

 柄杓から直接がぶがぶと水を口に含んでいるそはや丸は、実際は水を飲んでいるのではなく、その場に吐き出しているのだが。

「おい。何ぞ悪いもんでも食ったのか? ていうか、お前、刀のくせに、また人のものでも食ったのか」

「・・・・・・うるせぇよ。陰の気が残ってるんだ」

「陰の気? 烏丸か?」

 一通り口をゆすぐと、そはや丸は着ていた水干を脱ぎ捨てる。
 単の上に、元の着物を引っかけ、部屋に上がるとごろりと横になった。

---何か、随分ヒトらしくなったなぁ。まぁ元々人型でいるほうを好む奴ではあったが---

 ぼんやりとそはや丸を見つめ、そんなことを考えていると、腕の中の烏丸が、もぞりと動いた。

「あ、烏丸。気づいたか?」

 しばらくもぞもぞと動いた後、烏丸は、ひょいと顔を上げて、呉羽を見た。

「あっ! お姉さん!」

 嬉しそうな声を出す。
 きっと表情も満面の笑みなのだろうが、如何せん今は烏である。
 人間のように表情が豊かでないため、そこまではわからない。

 だが、羽をばさばさと動かして、全身で嬉しさを表現する。
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