妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「あはは。元気そうだな。良かった良かった」

「お姉さん~、おいら、会いたかったよぅ」

 ばさばさと羽ばたき、烏丸は呉羽にじゃれつく。
 が、そんな無邪気な烏丸の顔に、ばこんと小さな扇が直撃した。

「あいたっ」

「暴れるんじゃねぇ。羽が飛び散るだろうが」

 寝転んでいたそはや丸が、頬杖をついて睨んでいる。
 しょぼん、と項垂れる烏丸を、呉羽はよしよしと慰めた。

「全くお前は大人げないな。いやでも、烏丸は可愛いなぁ。こりゃ多子様も可愛がってくれるわけだ」

「へっ。呉羽はほんとに物の怪寄りだな。ヒトの子供は嫌いなくせに、物の怪の子供は、そんなに可愛いのか」

「物の怪のほうが、よっぽど素直だ。お前だってそうじゃないか。気に入らなければ喰い殺す。これほど素直なことはないぞ」

 空恐ろしいことなのに、呉羽はさらりと言う。

「・・・・・・ま、お前は端(はな)から物の怪の中で育ったからな。物の怪寄りになるのも、仕方ないか」

 呟くそはや丸の前に腰を下ろし、呉羽は相変わらず膝の上に烏丸を抱いてあやしている。
 すっかり気に入ったようだ。
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