妖(あやかし)狩り・弐~右丸VSそはや丸~
「うん。あ、そうだ。思いきり念を飛ばしたから、ちょっと力が弱まって、なかなか道を進めなかったのかも」

「そうか。あんまり無理するんじゃないぞ。・・・・・・そうだ。そはや丸、道を作ったんだって?」

 よしよしと烏丸の頭を撫でてから、呉羽は再びそはや丸を見る。

「道を作ったってことは、媒体を使ったってことか?」

「・・・・・・ああ。俺が直接烏丸を引っ張り出すわけにはいかんだろ」

 ごろりと寝返りをうち、そはや丸は背を向ける。
 烏丸が、ねぇねぇと呉羽を突いた。

「お姉さんなら、自分でおいらを右丸から引っ張り出せるの?」

「ん?」

「そはや丸は、自分がやったら力が強すぎて、おいらを喰っちまうって言うの。お姉さんがやるときは、お姉さんが直接右丸からおいらを吸い出すの?」

「・・・・・・吸い出す? ああ、その方法を使ったのか。ま、簡単だからな」

 特に動揺することなく、呉羽は頷いた。
 きゃあ、と烏丸が、妙にはしゃぐ。

「移しの術を使えば、烏丸にはもっと楽にできたんだろうけどな。あれは面倒だし。吸い出したのかぁ。右丸には、ちょっと苦しかっただろうな」

「お姉さんがしてたら、そんなの気にならなかっただろうけどね」

 手を組むように、顔の前で羽を合わせて、烏丸がぷぷぷ、と笑う。
 残念ながら、烏丸の意味深な言葉も、呉羽には通じない。
 とっとと別の話題に転換されてしまう。

「媒体・・・・・・。おいそはや丸。媒体に、何を使ったんだ? お前が直接できないなら、他の何かを使ったのだろ? 私もいないし・・・・・・あ、もしかして、あの女官か?」
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