電網自衛隊
第3章 マルファンクション
 翌火曜日の早朝、昇二は山口に揺り起こされて目覚めた。腕時計を見るとまだ6時だったが、山口のひげ面は真剣な表情をたたえていた。
「勤務時間前だが全員本部に集合だ。急いで支度しろ」
 昇二はベッドから飛び出すように降りて作業用の制服を着ながら訊いた。
「何かあったのですか?」
 山口は少し顔をしかめながら答えた。
「あったのかどうか、それはまだ分からん。だが最悪の場合に備えろ、との隊長の指示だ」
 サイバー空間防衛隊の本部に着くと、もうほとんどの隊員が集合していた。昇二と山口は他の十人の隊員と共に隊長のブリーフィング室に入るよう命じられた。
「手短に言おう。現在首都圏全域でスマートフォーンを含む携帯電話の通話が途絶している。メールのやり取りとインターネットへの接続は出来るようだが、なぜか音声通話だけが不通になっている。知っての通り、携帯電話会社の交換機は全てコンピューター制御だ。もしこれが固定電話にまで波及したら深刻な事態になる。サイバー空間防衛隊は東部方面の全自衛隊の電話回線に異常がないか24時間の監視体制に入る。よし、業務開始!」
 昨夜瞳に電話が通じなかったのはこれだったのか。心の中でそう思いながら昇二は担当のパソコンに向かって関東各地の自衛隊駐屯地の電話回線、光ファイバー回線をひとつひとつ調べていった。幸いにも自衛隊の専用回線に異常は見当たらなかった。
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