電網自衛隊
だが一瞬のうちにまたそれを否定する書き込みが現れる。
「こいつ、帝都電力の手先じゃねえ?あそこに原発があるのは常識じゃん」
さっきからこのいたちごっこの繰り返しだった。だが昇二は何か奇妙な違和感を覚え続けていた。ひとつはデマの書き込みの現れるスピードが速過ぎる事。こんなに速くキーボードを打てる人間が存在するのだろうか?もう一つの違和感は昇二にも何が変なのか、つかみきれないでいた。何か分からないが、漠然とした違和感。
その頃千葉市内ではデマに踊らされたパニックが既に起きかけていた。たまたま仕事で市内にいた篠原瞳もその群衆の中にいた。一緒に来ていた同僚の金子真澄が不安そうに自分のスマートフォーンの画面を見つめている。
ドーンという破裂音とともに、瞳のいた場所からもはっきり見える程空高く、キノコ雲のような爆炎が立ち上った。それは火力発電所で起きた爆発だったが、デマを吹き込まれていた群衆はパニックに陥った。
誰かが「放射能が来るぞ!」と叫ぶと、その場にいた全員が一斉に同じ方向に駆け出した。瞳も同僚も人のうずに巻き込まれて否応なくその方向に体を押し流された。その先には高さ20メートルほどの大きな公園の階段があった。誰かが足を取られて転び、その体に足を取られて後続の数人が倒れ、そこへ後から殺到する群衆が止まるに止まれず押し寄せた。
瞳は自分の足が宙に浮いたのに気づいた。はるか下に階段の終わりの地面が見え、背後から数十人の人間の体が降って来るのを瞳はなすすべもなく凍りついた目で見つめていた。
「こいつ、帝都電力の手先じゃねえ?あそこに原発があるのは常識じゃん」
さっきからこのいたちごっこの繰り返しだった。だが昇二は何か奇妙な違和感を覚え続けていた。ひとつはデマの書き込みの現れるスピードが速過ぎる事。こんなに速くキーボードを打てる人間が存在するのだろうか?もう一つの違和感は昇二にも何が変なのか、つかみきれないでいた。何か分からないが、漠然とした違和感。
その頃千葉市内ではデマに踊らされたパニックが既に起きかけていた。たまたま仕事で市内にいた篠原瞳もその群衆の中にいた。一緒に来ていた同僚の金子真澄が不安そうに自分のスマートフォーンの画面を見つめている。
ドーンという破裂音とともに、瞳のいた場所からもはっきり見える程空高く、キノコ雲のような爆炎が立ち上った。それは火力発電所で起きた爆発だったが、デマを吹き込まれていた群衆はパニックに陥った。
誰かが「放射能が来るぞ!」と叫ぶと、その場にいた全員が一斉に同じ方向に駆け出した。瞳も同僚も人のうずに巻き込まれて否応なくその方向に体を押し流された。その先には高さ20メートルほどの大きな公園の階段があった。誰かが足を取られて転び、その体に足を取られて後続の数人が倒れ、そこへ後から殺到する群衆が止まるに止まれず押し寄せた。
瞳は自分の足が宙に浮いたのに気づいた。はるか下に階段の終わりの地面が見え、背後から数十人の人間の体が降って来るのを瞳はなすすべもなく凍りついた目で見つめていた。