電網自衛隊
数日ぶりに見る都心の様子はまるでゴーストタウンだった。道のあちこちで車が壊れて散乱し、中にはまだ炎を上げて燃えている車体もあった。高山が貸してくれたオートバイで障害物を避けながら道路を縫うように走り、千葉市にたどり着いた時にはもうとっぷり日が暮れていた。
サイバー空間防衛隊の反撃が功を奏したらしく、千葉市内は電力、通信が既に復旧しつつあった。たどり着いた病院も電気とコンピューターシステムが復旧し通常業務を再開していた。
だがその中はけが人であふれかえっていた。昇二がどこへ行けばいいのか分からずきょろきょろしていると、見覚えのある若い女性が制服の袖を引いて来た。
「君、新田君?」
それは瞳の同僚の金子という女性だった。昇二も何度か会った事があるのでお互いにすぐ分かった。彼女は昇二の手を引いて地下に続く階段へ向かった。そこは臨時の遺体安置所になっていた。その数十もの遺体の中に、瞳は横たわっていた。昇二は最初意味が分からず、ふらふらと幽霊のような足取りで瞳に近づいた。
そのすべすべしていた頬は既に冷たくなっていた。右腕と左足があり得ない方向に折れ曲がっているのが、かけられた白いシーツの上からでもはっきり分かった。思わず床にひざをついた昇二にぶつかられ、振り向いた年配に男性が昇二の服を見て怒鳴った。
「おい、あんた自衛隊か?」
その声に遺体安置所にいる全員が振り向いた。その男性は昇二の前に回り込み制服の襟をつかんで涙を流しながら叫んだ。
「今頃になって何しに出て来たんだ?どうしてもっと早く出動してくれなかったんだ?」
サイバー空間防衛隊の反撃が功を奏したらしく、千葉市内は電力、通信が既に復旧しつつあった。たどり着いた病院も電気とコンピューターシステムが復旧し通常業務を再開していた。
だがその中はけが人であふれかえっていた。昇二がどこへ行けばいいのか分からずきょろきょろしていると、見覚えのある若い女性が制服の袖を引いて来た。
「君、新田君?」
それは瞳の同僚の金子という女性だった。昇二も何度か会った事があるのでお互いにすぐ分かった。彼女は昇二の手を引いて地下に続く階段へ向かった。そこは臨時の遺体安置所になっていた。その数十もの遺体の中に、瞳は横たわっていた。昇二は最初意味が分からず、ふらふらと幽霊のような足取りで瞳に近づいた。
そのすべすべしていた頬は既に冷たくなっていた。右腕と左足があり得ない方向に折れ曲がっているのが、かけられた白いシーツの上からでもはっきり分かった。思わず床にひざをついた昇二にぶつかられ、振り向いた年配に男性が昇二の服を見て怒鳴った。
「おい、あんた自衛隊か?」
その声に遺体安置所にいる全員が振り向いた。その男性は昇二の前に回り込み制服の襟をつかんで涙を流しながら叫んだ。
「今頃になって何しに出て来たんだ?どうしてもっと早く出動してくれなかったんだ?」