電網自衛隊
「私も与野党の国会議員の皆様には働きかけを続けてはいるのですが、力が足りないばかりに」
「いや、令嬢。俺はそういう意味で言ったわけじゃ」
 珍しくうろたえた様子を見せた昇二を手のひらで制して、令嬢は言葉を続けた。
「はい、それは承知しております。たとえ私の全財産を注ぎ込んでも、サイバー空間防衛法案は必ず成立させてみせます。そしてその間隙を埋めるために、みなさんと電網自衛隊を作ったのですから」
 それを聞いた高山は、もう気まずそうに黙りこんでしまい、その場を沈黙が支配した。竜がその雰囲気を何とかしようと、ことさらにおどけた口調で言った。
「い、いや、でも今の停電はビビりましたよね。あの時も最初はただの停電だと思ってたんすから」
「そうですね」
 令嬢が感慨深そうな表情で言った。
「あれからもう一年半も経ったのですね……」
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