無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
……お前。
本気で、この俺様に乗る気か?
思わずつぶやいた言葉なんざ、もちろん、届きはしなかった。
やって来た女の、あまりのへたれっぷりに、蹴る価値さえ無ぇ、と思った。
俺が暴れてしまえば、背に乗るどころか、触ることもできねぇらしい。
おまけに、鞭を振るうだけの度胸も無ぇようだったから、俺はやりたい放題だった。
手を出せば、噛みつく。
近寄れば、踏んづける。
それでも。
無駄だと判ってても、何度も近寄って来る所がウザく。
涙を必死にこらえているように、口をへの字に曲げている表情(かお)が、見ていられなかった。
だから徹底的に無視してやったのに。
そしたら、却って、女は更に俺にひっつきだした。
しかも、今日に至っては。
通常の調教時間だけじゃねぇ。
昼時でさえ。
手作りらしい、弁当を片手に、俺のそばにやって来やがったんだ。