無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
「……知らないわよ」


『え?』


「私だって、探してるの!

 前の皐月賞のとき、アンタ、足を痛めたでしょう?

 それは、俺の体重のせいだし。

 これ以上アンタに乗ったら致命傷を負わせてしまうって、すごく悩んでたけど……」


 そこまで言うと。


 普段、無駄に元気な彼女は、首をうなだれた。


「ある日、突然。

 騎手をやめるって言う置き手紙をのこして、失踪しちゃったの……

 それから、私お兄ちゃんに一度も会って無い……」


 もし、お兄ちゃんが自殺でもしてたら、どうしよう、なんて。


 何かの糸がぶちん、とキレたようだった。


 大粒の涙をためた小春に、俺は、落ち着かなく。


 蹄鉄をはめた前足で、がっが、と地面を掻いた。


『あの莫迦は、死ぬようなヤツじゃねぇ。

 普段から、お前と同じ、無駄に明るかったからな』


 でも確か。


 最後に、俺の鼻面を抱いた時、妙に暗かったな、と思いだし、ぶるるっと首を振った。


 縁起でもねぇや!


 
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