無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
勝手に、じたばたしている俺に、小春はちょっと首をかしげた。
「なぐさめて、くれたの?」
『そんなんじゃ、ねぇ!』
本当は、ちらっと。
こいつの元気が出ればいいな、なんて思った……のは気の迷いだ。
相手は、ただの腹立つ人間だし!
俺は、けっ! と唾を吐くと、鼻先で笑った。
『リョウがいねぇなら、お前で代用するしかねぇなって思っただけだ!』
「代用!? 失礼ね!!」
俺の言葉に、相当頭に来たらしい。
ちょちょぎれてる涙を、ぐぃ、と拭いて、小春は怒鳴った。
「私は、お兄ちゃんの代わりなんかじゃなく!
私らしく、アンタを走らせてあげるわよ!
お兄ちゃんは、アンタにペガサスの翼をやって、飛ぶように走らせたけど。
私は……そうね。
アンタの額の星に角をあげる。
そして、地上で最も早く走る獣のユニコーンになればいいわ」
どうやら、こいつ。
怒ると、元気になるタイプらしい。
ふん。
俺は、わざと胸を張ってせせら笑った。
『額に角! あんまり、速そうじゃねぇなぁ。
しかも、そんなもの。
もうひとつ貰って、二つになったら、触覚~とか言って、でんでん虫になりそうだぜ?』
「ストラップスター!!」
『うっせーな。怒鳴んなくても聞こえてるぜ!』