無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
少なくとも。
兄と走っていた頃のあんたは、もっと素直じゃなかった?
だって、 のびのびと……跳ぶように駈けまわっていたし!
私だって、アンタの気に入るように、頑張ってるのに!
なんだって、応えてくれないのよ!
小春は、そんなふうに怒鳴って、俺に向かってずぃ、と詰め寄って来た。
でも。
そんなコト言ってもな。
俺としては、どっちもそんなに変わらないつもりで付き合っているのに。
思い当たる節としては……そか。
あのときは、今とだいぶ状況が違ってたんだ。
ほとんど鞭を受けずに、自由に走ることだけ考えていれば、よかった。
レースに負けたら、コンビーフだと脅されることも無かった。
そして、何よりも。
『騎手が、リョウだったからな……』
そう、呟く本音に、小春の目が光る。