無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
「私は、その。リョウの妹なのに!」
『でも、本人じゃないじゃないか』
言い返した言葉に、唇をかみしめた、小春のほほが膨らんだ。
「どう違うっていうのよ!
お兄ちゃんだって、このききみみまがたま使って、アンタと話をしてたから、あんなに早く走れたんでしょ?」
『……いや、使ってない』
「ウソ!」
じゃあ、どうやって!
なんて、叫ぶ小春に、俺は首をかしげた。
『そう言えば、リョウとは、なにも使わなかったのに、なんであんなに上手く行ったんだろう?』
明らかに重いハズなのに、そいつを背に乗せても苦痛じゃなかった理由。
それどころか。
足を骨折すれば、死ぬことを承知で。
ただ、一緒にいたい、という気持ち一つで、ゴールへ向かったのは、なぜ……?
離れ離れになって時間が経ったのに、まだ。
その後ろ姿を追いかけてしまう、その気持ちは……
謎が解けずに。
いや。
本当は判っていても、無理に解いたら、ダメで。
……言葉にしたら、もっとダメな、謎だった。
だって。