無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
 
 でも、俺に芽生えた、恋心なんて、絶対に叶うわけがない。


 人間以外の別種属。


 しかも『オス』なんかに迫られて嬉しいヤツなんて居るワケがねぇ。


 一見静かでも、思ったより激しかった愛に。


 ……とても、莫迦莫迦しい答えに。


 出て来るのは、自嘲ばかりで。


 俺は、落ち着かなく足を踏み鳴らすと、小春に言った。


『最後に、お前の兄貴と走った時。

 足を痛めても頑張ったのに。

 結局、リョウは、帰って来なかったじゃないか。

 だから、俺は。

 人間が、信用しきれて無いのかもしれねぇ』


 ……そういうことにしてしまおう。


 切ない心を憎しみに変えてしまった方が、ただの馬でしかない俺にとっては、とても自然に見える。


 俺は、鼻息荒くいななき、がっが、と蹄を踏み替えると、小春に噛みつくように言った。


『だから俺は、人間の『言葉』は、信用できねぇんだ!

 そもそも、そんなききみみまがたま、なんてシロモノがあるから。

 言葉に頼って、他の感情を表すモノを見逃すんだろう!!』


 だから、その、俺の『片思い』を『言葉』にしかねねぇ、危険な道具をどこかにやってくれ!!!





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