無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
 そんな。

 決意も新たな俺とは違い、小春の方は、かなり緊張しているみたいだった。


 パドックで俺に乗り込んだ、普段は安定感のあるカラダが、小刻みに、震えている。


 新人の初戦でも。


 小春は、絶対負けられないって、俺にささやいた。


 嬉しいことを言ってくれるじゃねぇか!


 それは、小春も、俺の命を惜しんでくれたってこと。


 負ければ、コンビーフな俺を救ってくれようと、兄妹揃って考えてくれている。


 だから、俺も応えねぇとな。


 勝てば、小春は、勝利騎手の座に座り。


 俺も、命を繋ぐ。


 万々歳だ!


 そんなことを考えてながら、パドックを回ってた。


 不思議と、負けたことなんて、考えなかった。


 でも、それが『勝利』に繋がることも、知ってたけれど。


 何よりも。



 俺は、一人で走るんじゃねぇ、って感覚が、久しぶりに楽しかった。


 
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