無敵草食獣王子の憂鬱。真実の愛を繋ぐ強く堅い絆は風になって走ること。運命をかけたゴールはすぐそこだ!
 ところが。


 く……っ!


 あまりの緊張感からか。


 小春にたづなを、引き気味に持たれて、俺は、少し出遅れた。


 ちっ!


 ついてねぇぜ!


 二、三頭の馬が先行し、追いかけるのは、先行逃げ切りタイプの俺としては、嫌なレース運びだ。


 ドカドカと走ってゆく、他の馬の尻を追いかけながら。


 その場で萎えそうな気持ちを、ふるいたたせ、小春の夢を、自分の命を繋ぐために走る。


 走る!


 俺の背にある、小春と言う安定感は、やっぱり足に負担がかかったけれども。


 俺をコンビーフや馬刺にしないために、頑張ってくれる小春の声が聞こえたような気がした。


 他の馬の尻が、目前にあるのが悔しいぜ!


 頑張れ俺!


 走るんだ、俺!


 けれども、その差は、なかなか縮まらねぇ!


 無常にも、第一コーナーは、過ぎさった。


 そして、今までの勝利パターンでは、欠かせねぇ、第二コーナー先頭も、無かった。





 このままでは、負ける!


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