姫は救うと微笑み、神は殺すと無邪気に言った
滅多なことでは見られない、理性を剥離した人間の奥底は本当にどす黒い。
やっと死ねると微笑むものでさえ、ちょっと手先が狂ったと生かせば「早く殺して」と乱れて、刃を前にして「やっぱり死にたくない」と取り乱す奴とて見ていて感心さえもする。
十人十色の黒さ。薄かったり、濃かったり、同じ人間(色)なのにここまで感情の乱れが多種多様となれば見応えに面白さがプラスされる。
特に面白いのが、死ぬ瞬間になって死にたくないと思うもの。血が抜けていく時に呆然と、頭から魂が外気と混じり合うのを感じるように、その死への呆気なさ、自分の命は“この程度で終わるのか”と死ぬことを拒む奴は面白かった。