姫は救うと微笑み、神は殺すと無邪気に言った
「人の価値は死によって決まる。生きた結果が断定されるんだ、人生とは過程だからね。他人が見た、失われた人独りのありがたさによって価値が決まるが、肝心のもう現世にはいない当人が“その後”を語れるわけもなく、“今まで”さえ自身がゼロに割られてしまう死を持ってすれば無意味。
そこで価値を見いだすとすれば、それは痛みだ。痛みが大きければ大きいほど、苦しみが深ければ深いほど、『ああ、こんな痛みを持って死ぬんだ』と自分がやっていることの“重要性”に気づくんだ。
死は生易しいものじゃない。痛みこそが自身の生の有り難さの形だと実感できるだろうけど――自殺志願者の痛みは“予想の範疇”。しかもか自殺となれば、好きな死に方が選べるのだから、人は必ず“痛くないもの”を選ぶ。
本当に愚かだよ。痛覚があれば痛みは付き物で、死ぬ瞬間に初めて分かる自身(命)の価値でさえ生ぬるい。
中途半端だ。何もかも。全てを気づいたところでそいつは絶命する。最後の最期であまりにも“無意味な死”を遂げてしまうんだよ」