姫は救うと微笑み、神は殺すと無邪気に言った
饒舌に話す茶神の前には赤髪の女がいた。
茶神とはまた違った見方で言える、月が似合う女。月とはかけ離れている色を持とうが、その姿はうっかりと月から降りた女神にも見えてしまう。
表情とて期待を裏切らずに笑顔。茶神の常軌を逸した言葉にでも、女はさも興味深いと余計な口は挟まずに笑顔で聞いていた。
「自殺志願者の死は呆気ないと言いますが、あなたは一度自殺したことはあるのですか」
丸いテーブルの向かい側で茶神の話への質問をする女。名前は姫と言った。
本名が姫なのか、もしくはそう呼ばれているのか、名前を問えば姫と答えたのだから茶神はそう認識している。
「どういうことだい、姫」
「経験者でもないあなたが、自殺した人の痛みが薄いと語るのはおかしいと思いましてね。痛いですよ、死ぬのは。そうして怖い。拭いきれない感情を持って刃を首に刺す人が、私には到底、楽な死に方とは思えなかっただけですよ」