無口な彼が残業する理由 新装版
「クックックッ……」
頭上で響く笑い声。
そっと顔を出すと、丸山くんはベッドに肘をついて静かに笑っていた。
「俺が青木をって……あははは」
滅多に見ることのできない丸山くんの笑顔。
キュンとしつつ、困惑する。
「そんなわけないだろ」
バカだな、とでも言いたげに私の額を小突く。
頭痛の中にじわりと甘さが広がった。
でも、痛みが勝つ。
「嘘。いつだって青木青木って言うじゃない」
声を張るとまた頭がツーン。
「何それ。嫉妬?」
嬉しそうに顔を覗きこむ。
「なっ……」
図星だ。
図星だけど、図星だからこそ、腹が立つ。