無口な彼が残業する理由 新装版
丸山くんが電話を切った。
同時に深い深いため息をつく。
「青木?」
私が尋ねると、コクッと頷く。
「何話したの?」
「別に」
「丸山くん、怒ってた」
「神坂さんには関係ないから」
何よ、それ。
私の携帯で話したくせに。
「あっそ」
何なのよ、もう。
みんな私ばっかり除け者にして。
「もう寝る」
そう言って目を閉じると、冷たい手が額に触れた。
「おやすみ」
スルッと手が離れて、ぽん、ぽん、と背中にリズムを刻まれる。
私はゆっくりゆっくり眠りに落ちていった。