無口な彼が残業する理由 新装版
丸山くんは私が俯いたのが気に入らないのか、
手を私の顎に添えて顔を上げさせた。
丸山くんの顔が視界のほとんどを占める。
無表情。
「近いよ」
顔を背け手で押し退けようとすると
その手を掴まれどんどん奥へと押し込まれていく。
「え? ちょっと、何?」
私の背中が壁に付いたところで
丸山くんが人差し指を私の唇に当てた。
「しーっ」
ということらしい。
指を離すと再び丸山くんの顔が近づいてくる。
そして、ほんの一瞬だけ唇が触れ合った。