無口な彼が残業する理由 新装版

丸山くんは私が俯いたのが気に入らないのか、

手を私の顎に添えて顔を上げさせた。

丸山くんの顔が視界のほとんどを占める。

無表情。

「近いよ」

顔を背け手で押し退けようとすると

その手を掴まれどんどん奥へと押し込まれていく。

「え? ちょっと、何?」

私の背中が壁に付いたところで

丸山くんが人差し指を私の唇に当てた。

「しーっ」

ということらしい。

指を離すと再び丸山くんの顔が近づいてくる。

そして、ほんの一瞬だけ唇が触れ合った。

< 157 / 382 >

この作品をシェア

pagetop