無口な彼が残業する理由 新装版

「何よ、急に」

「別に」

丸山くんは私の問いに気のない返事をして、

男子トイレへと入ってしまった。

私はフラフラ席へと戻る。

どうしようもなくハッピーな気持ちが、

顔に出ていませんように。

あんな軽いキスだけで簡単に気分が上がるんだから安いもんだ。

酔っぱらってはしゃいでいた菊池さんは

床で横になって眠ってしまっていた。

青木もちゃんとシャツを羽織っている。

一次会はそろそろお開きになるのだろう。

「理沙先輩」

小悪魔が現れた。

丸山くんが席を立って寂しそうにしている。

「大地先輩って、いつもあんな感じなんですか?」

< 158 / 382 >

この作品をシェア

pagetop