無口な彼が残業する理由 新装版
「何よ、急に」
「別に」
丸山くんは私の問いに気のない返事をして、
男子トイレへと入ってしまった。
私はフラフラ席へと戻る。
どうしようもなくハッピーな気持ちが、
顔に出ていませんように。
あんな軽いキスだけで簡単に気分が上がるんだから安いもんだ。
酔っぱらってはしゃいでいた菊池さんは
床で横になって眠ってしまっていた。
青木もちゃんとシャツを羽織っている。
一次会はそろそろお開きになるのだろう。
「理沙先輩」
小悪魔が現れた。
丸山くんが席を立って寂しそうにしている。
「大地先輩って、いつもあんな感じなんですか?」