無口な彼が残業する理由 新装版

愛華ちゃんはしゅんとして唇を尖らせる。

「あんな感じって?」

「大地先輩、笑ってくれないんです。話しかけても素っ気ないし」

「ああ、なるほどね」

「私嫌われちゃったのかな」

わかるよ、その気持ち。

「そんなことないよ。あの人、元々が無口で無表情で無愛想だから」

でも、たまに笑うと可愛いんだよね。

とは言わないでおく。

「そうなんですか。それならいいんですけど」

周りの男たち(と私)がデレデレ笑いかけるから、

丸山くんの無表情が寂しいのだろう。

「クールなんですね」

「そうかな?」

無口なくせに自分の意思は強引に貫く

少し自分勝手な男だよ。

というのも、黙っておこう。

丸山くんの本性は

私だけが知っていたい。

下らない優越感だけど、それにすがりたい。

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