無口な彼が残業する理由 新装版

この喜びを、丸山くんにも伝えたい。

そう思って丸山くんの方を向いた。

丸山くんは口許を隠すように頬杖をついて、

険しい顔をしていた。

こちらを見る目は小さく嫌悪の光を発している。

私の企画が通ったこと、

気に入らないのかな。

応援してるって言ってくれたのに。

複雑な気持ちになったけれど、私はやっぱり喜びを伝えたくて足を進めた。

「あのね、丸山くん……」

だけど私の足は

「大地せんぱーい」

助けを求める愛華ちゃんに穏やかな顔を向けた丸山くんを見て

止まってしまった。

私が喜びを伝えるのを拒絶されたような気がした。

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