無口な彼が残業する理由 新装版
企画が第一関門を突破した嬉しさと
丸山くんに祝ってもらえない悲しさが
私の小さな胸の中で対流する。
さっきの丸山くんの視線は
「俺には関係ない」
とでも言いたげだった。
それは私の被害妄想なのかもしれないけれど、
プラスに考えるには冷たすぎる表情だった。
それに加えて、あの二人。
丸山くんと愛華ちゃんとの雰囲気が
先週に比べて打ち解けている。
職場の仲間だし課の後輩だし、
それに対して不満に思うのは器の小さい証拠みたいだけれど。
歓迎会の後、二人の距離が縮まったのは確かで、
それが職場の仲間としてだけでなく、
男女として縮まったことを実感せずにはいられない。
それが、すごく嫌だ。