無口な彼が残業する理由 新装版

「丸山くんの夢が叶わなくなるから、今はわたしとの関係、ハッキリさせたくないんだって」

投げやりに言ってジョッキを空ける。

「何だよそれ。わけわかんねーな」

「でしょ？」

青木はそれからも私の愚痴を笑って聞いてくれた。

「そうだよな」

とか

「あいつ、マジでヘタレだな」

とか言いながら。

フッたも同然の相手にこんな愚痴を漏らすなんて最低かもしれないけれど、

私には青木以外にこの気持ちをぶつける相手を見つけることができなかった。

散々毒を吐いた後、青木は少しだけ真剣な顔をして聞いた。

「で、お前は丸山に好きだって伝えたの？」