無口な彼が残業する理由 新装版
「好きでした」
私の答えに、菊池さんの顔が歪む。
「過去形?」
「……はい。告白して、フラれました」
「え?」
そんな顔しないでほしい。
「フッたの? 丸山が? 神坂を?」
「はい。散々その気にさせといて、酷いですよね」
私が笑うと菊池さんは眉間にシワを寄せて何かを考えていた。
うーん、と唸る。
「何かの間違いだと思うよ」
「どうしてですか?」
「だって、丸山はずっと……」
この続きは、結局聞けなかった。
菊池さんの言葉が終わる前に甲高い声が割り込んできたからだ。
「あれーっ? こんなとこにいたんですかぁ?」